海外で生活する相続人が株式を相続しただけで、所得税が課されるのですか?

  • 2018/2/25
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Q.
 海外で生活する相続人が株式を相続しただけで、所得税が課されるのですか?

A.
 株式を売却して利益が発生した場合には、所得税が課されます。具体的には、100万円で購入した株式が200万円に値上がりしたために、国内で売却した場合、売却益は100万円となり、この100万円の利益に対して、所得税が課されるのが通常です。
 また、仮に、一定額以上の株式等を有する資産家が株式を保有したまま海外に出国したとします。この場合には株式をまだ売っていないものの、実現していない株式のもうけ(含み益)に対して、所得税が課されます。これは出国税という制度ですが、分かりやすいとは言いにくいでしょう。
 香港やシンガポールや香港といった国は、株式の利益に所得税が課されない(いわゆる非課税国)ため、日本における所得税を逃れようと非課税国に移住し、その国で株式を売って課税を逃れる場合があります。出国税は、こうした行為を防ごうと、1億円以上の有価証券を有しているなど一定の条件に該当する資産家を対象として創設された制度であり、平成27年7月1日以後の出国について適用されています。
 出国税については、本人の出国のみならず、本人より海外で生活するご家族に株式が贈与された場合や本人が死去して海外で生活する相続人に株式が渡った場合にも同じく所得税が課されてしまいます。
 最近では急激な国際化のため、本人よりむしろ、お子様が海外転勤や留学等のために海外で生活する機会が増加しています。また、現時点では本人が海外で生活する予定がなくても将来的には分からないため、他人事と言い切ることはできません。
 ちなみに、5年以内に日本に帰国すれば、帰国より4カ月以内に手続を行うことにより納付した所得税を還付してもらえます。

 死去した被相続人の所得税の準確定申告は死去してから4カ月以内に行う必要があります。相続の発生により株式が海を渡った場合に出国税が課されると述べましたが、この出国税についても死去してから4カ月以内に、しかも売却が実現していない株に対して出国税の申告と納付を行う必要があります。
 仮に、相続人が日本で生活する長男と海外で生活する次男であり、株は長男が相続する予定で、海外で生活する次男は株を取得しないことから株は海を渡らない予定であるとします。
 このケースについては、出国税の対象とされる株式は日本で生活する長男が取得し、海外で生活する次男が取得しないという遺産分割協議が確定している場合には、問題ありません。ただし、相続が発生してから4カ月以内に遺産分割が確定するか否かは通常分からず、一般的には4カ月は短期間であるといえるでしょう。相続より4カ月以内に遺産分割協議が確定しない場合には長男・次男の共有で株式を取得したものとされ、次男も取得したこととなることから、出国税に係る準確定申告と納付がいったん必要とされます。以後遺産分割が確定した際に税金を戻す手続が必要となります。

 一時的な出国や売却が実現していないために納税資金が不十分であるといった様々な事情があると思われますが、こうした事情への配慮から、「納税管理人の届出書」を提出した者は、一定の条件の下で5年間(最大で10年間)納税が猶予される制度を選ぶことが認められています。ただし、猶予期間中は毎年のように届出書の提出を行う必要があり、手間を要するものの、納税資金が不足している状況においては選ばざるを得ない選択肢となります。

 したがって、1億円以上の株式等を有している場合には、遺言を作成しておくといいでしょう。前述のケースにおいて日本で生活する長男に相続させるという内容の遺言が存在すれば、死去してから4カ月以内に株式の行き先が決定していることになり、出国税に係る準確定申告と納付は必要なくなります。そのため海外で生活している推定相続人あるいは海外で生活する可能性のある推定相続人が存在するのであれば、遺言を作成しておくことをお勧めします。

 また、上場株式などだけではなく、企業オーナーが有する自社株も出国税の対象とされます。自社株は高額な評価額となるにもかかわらず換金性が乏しいことから、出国税が課されると大変です。同様に海外で生活する推定相続人に自社株が渡れば出国税の対象とされることから、やはり遺言を作成しておくことや存命中に自社株対策を講じた後に先に国内の後継者へ自社株を移しておくことなどがより大切です。

 出国税(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)の概要をまとめると、次のようになります。
1.対象者
 国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう。以下同じ)をする居住者
2.対象財産
 有価証券等(有価証券、匿名組合契約の出資持分)、未決済デリバティブ取引等(決済をしていないデリバティブ取引、信用取引及び発行日取引)
3.譲渡したものとみなされる額
 次の区分に応じ、それぞれに定める時点における有価証券等の価額に相当する金額又は未決済デリバティブ取引等を決済したものとしてみなして算出した利益の額もしくは損失の額とする。
 (1)国外転出時までに納税管理人の届出をした場合
  国外転出時における金額
 (2)上記(1)以外の場合
  国外転出予定日の3カ月前の日における金額
4.要件
 次の(1)及び(2)に該当する居住者であること
 (1)上記「譲渡したものとみなされる額」に定める金額の合計額が1億円以上である者
 (2)国外転出の日前10年以内に、国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年超である者
 なお、国内に住所又は居所を有していた期間については、納税猶予を受けている期間は含まれ、出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格をもって在留していた期間は除外される。
5.5年以内に帰国した場合
 帰国日より4カ月以内に更正の請求を行った場合において、出国税の適用を受けた有価証券等又は未決済デリバティブ取引等を保有し続けていたときには、出国税の課税取消しが認められます。

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